「はる!ブランコの漕ぎ方忘れちゃった!」


「こうだっけ?」なんて言いながら、ブランコに座り、両足を大きく前後させるひー。


久しぶりの公園、ましてや遊具で遊ぶのなんか何年ぶりになるかわからない。


ブランコなんて、どう遊んでいたのか忘れてしまっていた。


「ひー。あのね、聞いてほしいことがあるんだ」


ブランコと奮闘しているひーに、あたしは声をかける。


元気になったひーに、どうしても誓いたかったんだ。



「あたし……将来、お医者さんになろうかな、って考えてるんだ」



ひーは動きを止め、驚いたようにあたしを見つめる。


「あたし、今まで夢なんてなかった。将来なりたいものとか全然なくて、高校卒業したら……なんて一度もちゃんと考えたことなかったの。就職か進学かも決めていなくて、この前先生に呼び出されたぐらい……」


「でも、」と言葉を繋げ、空を仰ぐ。


ついさっきまで、街を真っ赤に染める夕焼けだったのに、もう赤から黒へのグラデーションが現れていた。