春休み中の学校は、ガランとしていて、どこか寂しい。
でも、あたしたちの過ごした教室は、今日だけは違う。
「うわぁ……」
ドアを開けたひーは、思わず足を止める。
黒板にでかでかと書かれた“退院おめでとう”の文字。
飾り付けされた壁。
机は後ろに下げられていて、椅子だけが円をつくるように置かれている。
「裕菜!退院おめでとう!」
「終了式一緒に迎えられなかった分、今日パーッと騒ごう!」
みんながひーに声をかけるけど、ひーはいまだに呆然としている。
「そんな……。はる、知ってたの?」
「これの発案者は伊沢だぜ」
高村くんの言葉に、ひーは目を見開く。
「伊沢さん、『ひーに終了式やってあげたい』って」
「まあ、打ち上げパーティーみたいな感じになっちゃったけどな」
みんなは苦笑する。
もともとはひーのためだけの終了式を計画していたんだけど……。
教室に施された装飾や、たくさんのお菓子が、その計画を見事に壊している。
だけど、ひーはまたまた泣きそうな顔で。
「みんなっ……ありがとう!」