「はる!」


ひーが嬉しそうにあたしの名前を呼んだ。


「ひろちゃんってば〜、俺もいるのに〜」


隣の田代先輩が、少し不満げに口を尖らせる。


「あっ……先輩ごめんなさいっ」


「ははっ、いいよ。気にしてないから」


申し訳なさそうに頭を下げるひーを見て、先輩はケラケラと楽しそうに笑った。



「はい。ひーの好きなシュークリームだよ」


ベッドに備え付けられているテーブルに、差し入れを置く。


病院の裏手に見つけたかわいらしい洋菓子店で、ついさっき買ったものだ。


だけど、ひーは「あ……」と小さくつぶやいて、目を伏せた。


「ごめんね……。明日手術だから、午後から何も食べちゃダメってお医者さんに言われてて……」


「あ……そっか」


「本当にごめんね。せっかく買ってきてくれたのに……」


悲しそうに笑うひーが見てられなくて、あたしは俯いてしまった。



……手術。


明日だということを、嫌でも思い知らされてしまう。


「シュークリーム、みんなで食べて!」


ひーの気遣いがつらかった。