「なんかさ、変わったよな伊沢」
病院を出てしばらくしてから。
隣を歩く高村くんが、頭の後ろで両手を組みながら言った。
ちなみに田代先輩はまだひーと一緒で、高村くんはあたしを家まで送ってくれるらしい。
まあ、そんなことはおいといて。
「いきなり何?っていうか、どこも変わってないわよ」
「いーや、変わったよ」
本人が変わってないって言ってるのに。
「わかるよ。俺、ずっと伊沢のこと見てたから」
白い歯を見せて笑う高村くん。
真っ赤な夕焼けを背景にしてるから、その笑顔がさらに輝いて見える。
キラキラと光る髪に、思わず目を奪われてしまった。
「前から好きだったけど、今の伊沢はもっと好き!」
──まったく、この男には“羞恥心”というものが存在しないのだろうか。
「……っばっかじゃないの!」
恥ずかしくて、あたしは高村くんに背を向けてしまった。
「まあたぶん、変わったんじゃなくて、本当の伊沢に戻れたんだと思うけどね」
高村くんは嬉しそうに笑いながらあたしの手を取り、あたしの歩幅に合わせて歩いてくれた。