──ああ、震えが止まらない。
「大丈夫です。左足首を捻挫。それから左肘を打撲してるだけで、命に別状はありません」
医者の声が、とても遠くで聞こえる。
緊張が解けて、大きく息を吐いた。
ひーは、まだ完全に身体が回復していない。
そんな中、水を飲みたくなって階段を降りようとした時、足を滑らせ、そのまま転がるように階段から落ちてしまったらしい。
「ひー……」
眠ったままのひーの頭を、美香子さんが優しく撫でる。
ひーに大きなケガはなかった。
だけど、あたしの気持ちは複雑。
ひーが無事で良かったと思う反面、こんなふうになる前に本当のこと言ってほしかったと思う自分もいるんだ。
「伊沢」
優しい声が耳に届き、あたしと、そして美香子さんも振り返る。
あたしの電話を受けて駆け付けてくれた、高村くんだった。
「高村くん……」
美香子さんもすでに一度高村くんと会っているから、特に驚くことはない。
でも、駆け付けてくれたのは彼だけではなかった。
「はるひちゃん……」
田代先輩……?