「それは違うよ!中里は、伊沢を一番の友達だと思ってる。俺は部外者だけど、あの夜の仲直りを見てたからわかる。あの中里の涙は嘘じゃない。心からの友達に戻れたことを本当に喜んでた」
「だったらどうして!!」
自分で考えていたよりも、一際大きな声だった。
「だったら何で、あたしじゃなくて田代先輩なの!?」
何なんだ、自分。
田代先輩を好きだった時は散々ひーを妬んでおいて、今度はひーの秘密を知ってる先輩に嫉妬。
いつまでたっても、あたしの心は綺麗になれない。
醜い感情を常に持った、汚い人間。
「病気だったなんて、黙っててほしくなかった……」
死ぬかもしれないなんて、何で言ってくれなかったの、ひー?
「俺が中里の立場だったとして、俺も言えなかったと思う」
顔を上げると、高村くんは困ったように笑っていた。
「大事な親友に、そんな苦しそうな顔させたくねーもん」
あ……。
黙っていることが、ひーの優しさだったのだとしたら。
視界が歪んで、雫が頬を伝う。
「……バカだよ、ひー……」