そうすると、せきとめていたものが溢れてしまったように、ひーが声を上げて泣き出した。


「本当は怖いの……!死ぬかもしれない手術を受けるか、このままいつ来るかわからない最期を待つか、いきなりそんな選択を迫られても……どうすればいいかわかんないよ……!」


──知らない。ひーがそんなに苦しんでいたこと。


知らない。
ひーがそんなに悪い病気を抱えていたことも、悩んでいたことも。


親友だったはずなのに、あたしは何ひとつ知らなかった。


それからは、ひーの嗚咽しか聞こえてこなかった。


あたしも、とてもひーと顔を合わせられなくて、高村くんと共に病院を出た。




「あの、伊沢……」


「あたし、ひーのことわかったつもりで何も知らなかった」


何か言おうとした高村くんを遮って、あたしは言う。


「あたし、ひーはあたしを親友だと思ってくれてるって勝手に考えてた。でも、そうじゃなかった。当たり前だよね。あたし、最近までひーを妬んで羨んでたんだから。ひーだって、こんなあたしなんか嫌いになってるよね」


言葉が次から次へと出て止まらなかった。