「……これからどうしようか」


歩きながら、ぽつりと高村くんがつぶやく。


正直、ひーのことで頭がいっぱいで、あたしはデートの続きどころではなかった。


「……うん、どうしよっか……」


高村くんの言葉なんてあまり耳に届いていない。
思わず適当に答えてしまう。


心ここにあらずなあたしに高村くんは気付いたみたい。


だって……大きな手が、あたしの震える右手を包んでくれてる。


「……今日はもう、帰ろうか」


少し寂しげな声色。
なんだか申し訳なくなってくる。

でも、このままずっと一緒にいても、あたしは高村くんとのデートを心から楽しむことなんてできない。


「うん……ごめんね」


「いいよ、デートなんていつでもできるし」


高村くんの明るい笑顔が、あたしの気持ちを少しだけ軽くしてくれた。


「ごめんね……高村くん。それから……ありがとう」


ぎゅっと握ると、高村くんも痛くないぐらいに握り返してくれる。


彼の優しさが、心地いい。


だけど、あたしの不安は拭えなかった。