「俺さ、伊沢とこんなふうになるなんて思ってなかった」
楽しい会話が途切れ、一瞬の静寂の後に、高村くんが口を開いた。
「俺、ずっと前から伊沢のことが好きだった。でも、伊沢が田代先輩が好きだってことも知ってたし、伊沢が俺をクラスメイトとしか思ってないこともわかってた。だから……」
「だから、あの日、伊沢について保健室に行ったんだ」
そう言って、高村くんは苦笑する。
高村くんはずっと、あたしが気付くよりも前からずっと、あたしのことを想ってくれていた。
「報われない恋でもいいやって思ってたけど、やっぱり……想いは通じあえたほうが嬉しい」
高村くんは頬杖をついたまま、あたしを見つめる。
優しい瞳が細められ、次第に弧を描く。
「超大好きっ!」
無邪気な笑顔で言われてしまい、あたしはもちろんドキッとするわけで。
真っ赤な顔を両手で覆い隠し、
「もう、こんなところでやめてよ……恥ずかしいっ」
あたしがひねくれても、高村くんは楽しそうに笑っていた。
「あたしも好きだっつの……」
「ん?何か言った?」
「何でもないよ」