あれ、あたし変なこと言っちゃった感じなのか?
「待ちきれなくて……気付いたら家飛び出してて、30分前には着いた」
苦笑する高村くんにつられるように、あたしも頬を緩ませる。
待ちきれなかったのは、あたしも一緒だよ。おかげで昨晩は全然寝れなかったもん。
恥ずかしいから、言ってあげないけど。
「じゃあ行こっか」
にっと笑う高村くん。
うん、と頷くと、あたしの歩幅に合わせて高村くんが隣を歩く。
「あ、信号変わるよ!」
目の前の横断歩道の信号が、もうすぐで赤になろうとしていた。
「渡っちゃおうぜ!」
「えっ!」
パッとあたしの手を取ると、高村くんは走りだした。
点滅していた青が赤に変わる。
それよりも前に、あたしたちは横断歩道を渡りきる。
それでも、繋がれた手が離れることはなかった。
「……」
「……あ、ごめん!」
じーっと握られている右手を見つめていると、それに気付いた高村くんは慌てて離した。
……離れちゃった。