今はもうふっきれてるけど、高村くんを好きになったのかと聞かれると返答に困る。
高村くんはずっとあたしを支えてくれた、優しい人。
『高村くんをどう思ってるの?』と聞かれれば、あたしは感謝とか尊敬とかそういう気持ちがあると答える。
あたしの心のよりどころだった高村くんを、好きか嫌いかの簡単な選択対象にはできない。
だから……わからないんだ。
再び考えすぎて唸りだしたあたしを、ひーはどこか楽しそうに見ている。
もう、こっちは真剣に悩んでるのに。
「まあまあ、ゆっくり考えればいいじゃん。答えは案外、ちょっとしたきっかけで見つかるものかもよ」
「うん、わかった」
「あ、でもあんまり待たせすぎるのはよくないよ。高村くんも気が気じゃないだろうし、千春とかいう後輩も狙ってるっぽいし!」
千春……。
高村くんに名前で呼ばれた時、あの娘の顔が浮かんで我に返った。
千春ちゃんのことを呼んだような気がして、腹が立った。
だから一瞬高村くんの力が弱まった隙に逃げたんだけど。
いまだにむかついた理由がわからない。