「──…んんっ、」
高村くんの舌が、あたしの舌を捕えて放さない。
彼の右手はあたしの頭を押さえていて。
頬に触れていた左手は、今はあたしの右手を握っている。
完全に逃げ場はない。
全身に熱が回って、頭がぼんやりする。
あたしは、高村くんの甘いキスにとにかく耐えるしかない。
「んっ……伊沢……」
名前を呼ばれて目を開ければ、高村くんがキスをやめて、あたしをまっすぐに見つめていた。
その視線までもが熱を帯びている。
「高村くん……」
「マジで大好き」
言うと同時に、再びキスされた。
もう……すべて委ねてしまおう。
ほとんどされるがままなのに、あたしは不思議と嫌じゃなくて。
高村くんなら……。
そう思った。
なのに、
「はるひ……」
高村くんがあたしを名前で呼んだ瞬間、
夢のような時間が終わった。
“ハルちゃん”
千春ちゃんの顔が脳裏によぎったことで現実に引き戻された。
「もう……やめて!!」
力いっぱい身体を押し返して、「高村くんのバカ!」と捨て台詞を吐いてから逃げた。