すると、高村くんは少し頬を染めて、下を向いてしまう。


「高村くん?どしたの?」


「……俺、伊沢死んじゃうかと思ってマジ焦った」


そう言いながら、高村くんは今度はあたしの頬に手をあてる。


その手は……少し震えていた。


だけど、温かさはいつもと同じ。
その大きな手に安心感を覚える。


「バカだなぁ、高村くんは。そんな簡単に死んだりしないよ」


「バカだよ。伊沢のこととなると、自分が自分じゃなくなる」


ドキッと心臓が跳ねる。



「伊沢が好きすぎて、もうどうしたらいいかわかんねえ」



“え……?”


そう口に出る前に、



「んっ──…」



唇を塞がれた。


高村くんの顔が目の前にあって。
唇に何かが触れて。
全身に熱が走って。


うまく息ができなくて口を開けると、熱い舌が入ってきた。



あたしは体育に戻ろうと思ってたのに、


何で……


高村くんにキスされてるの?




遠くの方で、カキーンとバットとボールがぶつかった音がした。