──あれ?腹が立つ?
何で?
どうしたんだ、あたし。
何で……
いつから……
高村くんなら勘違いされてもいい、なんて思うようになったの?
「なぁんだ、彼女じゃないんだぁ……」
そう言った千春ちゃんが、不敵に笑っているような気がするのは、きっとあたしの気のせい。
「それよりハルちゃん、急にどうしたの?」
「あ、そうだった!相沢先輩に伝えてほしいことがあるんです」
「部活関係?」
「はい。今日、相沢先輩部活お休みされてたので連絡できなかったんです」
「いいよ、わかった。伝えとく」
優しく笑う高村くんに、千春ちゃんはサッカー部の明日の練習試合のことについて相沢くんへの伝言を頼んだ。
──何でだろう。
さっきまで隣を歩いていたはずなのに、今はこんなにも高村くんが遠く感じてしまう。
そして、いわゆる女のカンというものでわかった。
千春ちゃんは……高村くんのことが好きなんだ。
あたしを時折睨んでくるのも、
高村くんだけを名前で呼んでいるのも、
全部……高村くんに恋をしているから。