大きく手を振りながら、こちらに駆け寄って女の子。
ぴょこぴょこと走るたびに揺れるツインテールが可愛い。
同じ学年では見たことないし、高村くんを“先輩”って呼んでたから、後輩ちゃんかな?
「律先輩っ!」
立ち止まったあたしたちに追い付いた女の子は、肩で大きく息をして呼吸を整える。
ん?ていうか、“律”先輩?
名前……呼び?
なんとなく違和感を感じた。
そして高村くんにも。
「──ハルちゃん」
ドキッとした。
あたしを……呼んだわけじゃない。
後輩であろう女の子を見て、そう言ったんだ。
胸がひどく騒つく。
ざわざわして、早鐘を打っている。
何で……そんなに親しそうな感じなの?
「伊沢、紹介するよ。この子サッカー部のマネージャー。浩也が部活終わるの待ってる間、一緒に喋ったりしてたら仲良くなったんだ」
「1年の千春(チハル)です」
高村くんの紹介なんてまるで耳に入ってこない。
女の子が頭を下げたのに、あたしはいろいろ理解するのに時間がかかって応えられなかった。