「あたし……もう先輩のことならふっきれてるよ」
「え……」
高村くんもひーが先輩と付き合っていることは知ってる。
振られたあたしのことを思って、きっと悲しくなったんだろう。
「もう大丈夫。ひーが幸せになってくれるほうが、あたしは嬉しいんだ」
口に出してみるとなんだかすごく清々しくて、あたしは自然と笑顔になっていた。
「そっか……ならよかった」
それを見て、高村くんもやっと安心してくれたみたい。柔らかく笑ってくれた。
「……で、高村くんどうしたの?」
「ああ、そうそう!伊沢と一緒に帰りたいなぁと思って」
男の子と……一緒に帰る……。
友達として、そうする人もいるかもしれない。
でも二人きりで帰るというのは、あたしにとって一大事。
初めてあたしを好きだと言ってくれた人だから……意識するなというほうが無理な話だ。
「ダメならいいよ!伊沢が一人だったからどうせならって思っただけだから!」
人懐っこい笑顔で言ってくれる高村くん。
確かに緊張はするけど、
「ううん、一緒に帰ろう」
高村くんとならいいと思った。