──雪が降っていた。


重く暗い空から舞い降りてくるそれは、あたしの手のひらに着地すると、一瞬で消えてしまう。


儚い……だから綺麗なんだ。



「どうりで寒いと思えば……。結構降ってんな」


「うん……」


「ホワイトクリスマスだな!」と無邪気に言う高村くん。


鼻先に雪が落ちたのを見て、あたしは思わず笑ってしまった。


「あたしね、雪みたいな生き方をしてみたかったんだ」


「え?」


あたしの突然の言葉に、驚いたように目を丸くする高村くん。
あたしは一度笑いかけてから、ゆっくりと口を開く。


「雪って一瞬しか生きていられないでしょ?
だから空で生まれてから地面に落ちて消えるまでの間、ひらひらと一生懸命自分を綺麗に魅せながら、なおかつ自由に舞っているの」


初めて雪を見た時、本当に素敵だと思った。


短い人生だからこそ、何かにとらわれることなく自由に生きる。
自らを美しく魅せることも忘れないからすごい。


例えるなら、そう……桜の花びら。


散ろうとする最後の最後まで美しい。


風に身を任せ、自由気ままに舞い踊ったのち、一生を終えるんだ。