「もうすぐ9時じゃん……」
部屋の時計を見ながらつぶやくと、「うそ、マジで?」と相沢くんも自分の携帯で時間を確認する。
「私そろそろ帰らなきゃ……」
「あたしも。うち放任主義だけど門限だけは厳しいんだよね」
おずおずと言う香波ちゃんに、あたしも相づちをうつように言う。
いくら高校生だといっても、さすがに帰らなければならない。
「じゃあ今日はこれで解散するか!」
相沢くんは立ち上がってコートを羽織りはじめる。
「えー、みんな帰っちゃうの〜?」
「当たり前だろ。さすがにこれ以上遅くなんのはまずい。俺たちはともかく香波たちは女なんだぞ」
まだ遊びたい、とでも言いたげな高村くんを相沢くんは嗜める。
「はーい」と、高村くんは渋々納得した。
「俺、香波と一緒に帰るけど……伊沢はどうする?俺たちと帰るか?」
うーん、ひとりは怖くてちょっと嫌だけど……それはお邪魔な感じがして申し訳ない。
「あたしはひとりで……」
「いや、ダメだ」
あたしの言葉を遮って、高村くんは何故か胸を張って言った。
「俺が伊沢を家まで送る!」