ひーのご両親って、クリスマスはいつも旅行に行っちゃうんじゃなかったっけ……?
疑問が頭に浮かび、帰ろうとしたあたしの足が止まる。
ひーの両親は、クリスマスが結婚記念日だからと毎年一泊二日の旅行に行ってしまう。
だからその日は、ひーをうちで泊めてあげてた。
夜遅くまで二人で騒いで、お母さんによく怒られてたっけ。
でも……今年は家族と、ってことは、今年はご両親の旅行はなくなったのかな?
「伊沢!何、突っ立ってんだよ。早く行くぜ」
「あ……うん」
高村くんに呼ばれ、あたしは教室を出る。
最後に見たひーの寂しそうな顔が、頭から離れなかった──。
「──…ポテチとコーラ、そんでケーキ!」
高村くんが、かごに入れた商品を一個一個見て、買い忘れがないか確認する。
「よし、バッチリ!会計は、4人で割り勘だからなー」
「わかってるっつの」
相沢くんが、「おごってくれたっていいのに」と小声でつぶやいたのを、あたしと香波ちゃんは聞き逃さなかった。