そんなふうに考えられる高村くんが、まぶしくて輝いて見えた。


「すごいね……高村くんは。でも、あたしは……」


あたしは……そんなふうに考えることなんてできないよ。



「それでいいんだよ、今は」



気持ちを読み取ったかのようなタイミングと返事に、驚きのあまり目を丸くするあたし。


高村くんはそれに構うことなく、何事もなかったかのように笑って……



「もう落ち着いたろ?教室戻って、6限は受けようぜ」



あたしの手を握ったまま、保健室を出ようとする高村くん。


少し気になったけど、教室まではこのままでいたいと思って、何も言わなかった。


「そういえば6限目って何だっけ?」


「数学」


「……やっぱもう1時間サボろっか、伊沢!」


「……ダメだよ」


数学嫌いなんだ、高村くん……。


自然と頬がゆるくなってしまうのは、右手の温もりと一緒に高村くんの優しさも伝わってきたから……。


なんて思いながら、あたしたちは教室へ戻った──。