あたしがつたない言葉で話している間、高村くんは相づちを打ちながらも静かに黙って耳を傾けていた。


「──それから……ひーとは全然喋ってないんだ」


「そっか……」


ひー。

あたしのために、田代先輩を振ったひー。

ひーだって、先輩のことが好きだったのに、それでも振った。


あたしがふたりを邪魔していた。

ひーも先輩が好きだって気付いた時に、あたしがおとなしく身を引いていればよかったんだ。


そうすれば、ひーと先輩は遠回りせずに結ばれたかもしれない。



「ふたりにとってあたしは、“伊沢はるひ”っていう“障害物”なんだよ。
ふたりを引き裂く大きな“障害物”」



思ったことをこぼすみたいにつぶやくと、高村くんはあたしの手をぎゅっと握った。


「伊沢は“障害物”なんかじゃないよ」


さわやかであるのに、深みのある落ち着いた高村くんの声。

聞いているだけでホッとする。



「綺麗な物語みたいにならないのはしょうがない。恋愛は理屈じゃないんだ」