「──あ〜〜、もうバカ!」
しばらくすると、高村くんのそんな声が離れたところから聞こえた。
そっと目を開けると、高村くんはいつのまにかあたしから離れていて、頭をかいていた。
「高村くん……?」
「伊沢のバカ!そんなんじゃ、いつかマジで襲われるぞ!」
「は……?」
何であたしは、説教されてんの?
というか、意味がわからない。
「こういう時は、相手の腹蹴って逃げるの!わかった!?」
「……はぁ」
訳が分かんないまま適当に頷くと、高村くんはゴホンと咳払いをして姿勢を正した。
「そういえば……伊沢、田代先輩に振られたの……?」
遠慮がちに高村くんが問いかける。
さっきの騒動でひーが田代先輩に告られたことがみんなにばれた。
ひーが告られたイコール、あたしが振られたことになる。
「うん……。って言っても、告白してもいないんだけどね」
あたしは、高村くんに話していなかった今までのことを話した。
先輩に振られたことも、それが原因でひーと喧嘩したことも全部。