保健室に先生はいなかった。


休んでいる人もいない。


二人きりの保健室……あの日と同じだ。


初めて高村くんと話して、“好き”と告白されたあの日と、同じ状況。



「あん時と一緒だな……」



同じことを考えていたのか、高村くんが静かにつぶやいた。


「……うん」


だいぶ落ち着いたはずなのに、高村くんと二人きりという緊張から、再び鼓動が激しくなる。


「よいっしょ……と」


高村くんは、あたしが座っているベッドの隣のベッドに、ごろんと寝転がった。


「ほら、伊沢も」


「え……」


戸惑いつつも、あたしもそのまま横になった。


本当に……あの時と同じ。



「伊沢」


「はっ、はいっ!」


名前を呼ばれただけ。
それだけなのに、心臓が大きく跳ねて、声が裏返った。


「ぷっ……何緊張してんの?」


高村くんが笑いをこらえながら、あたしを優しく見つめる。


「別に緊張なんか……」


大人っぽいその表情が、さらにあたしの心拍数を上げた。