何も考えず、言いたいことだけを言った。


だけど、先輩たちが怖かったのは事実。


自分でも気付かないうちに大量の冷や汗が出ていて、足や手、肩は小刻みに震えていた。


「……た、高村くん……」


「大丈夫だよ」と笑ってみせるつもりが、うまく口角が上がってくれない。


そんなあたしを見た高村くんは、つらそうに顔を歪めてあたしの手を取った。



「よく頑張ったな……」



あたしの右手をぎゅっと握り締めて、そして身体が高村くんの胸へと引き寄せられる。


教室の真ん中で、みんなに見られてるのに、高村くんはあたしを強く抱きしめた。


そしてあたしも、高村くんに身体を預けたまま泣いた。


すると、ぽんっとあたしの頭に高村くんじゃない他の誰かの手が乗せられる。


びっくりして顔を上げると、


「かっこよかったぜー、伊沢」


相沢くんが優しく笑い、「いい子いい子」と頭を撫でてくれていた。


「すごいですっ、はるひちゃん!私には到底真似できません!」