「高村くん……」


高村くんは、先輩からあたしを守るようにして立ちはだかり、先輩の振り上げた右手を受けとめていた。


これで一体何度目なんだろう、高村くんに助けてもらうのは。



「そんなんだから、男にモテないんですよ。センパイ」



高村くんが嘲笑うかのように言うと、先輩たちは顔を真っ赤にして「何だと!?」といきりたつ。


だけど、返す言葉が見つからないようで、



「……ふんっ、今回は大目に見てやるよ」



「覚えてろよ!」と、絶対に負ける奴が言うベタな捨て台詞を吐いて、先輩たちは自分の教室に戻っていった。



「大丈夫か、伊沢?」


高村くんが振り返り、立ち尽くしてるあたしに問いかける。


あたしはそれに応えることなく、ヘナヘナと腰を抜かし、床に座り込んだ。


「い、伊沢!?」


あたしを心配して、高村くんが真っ先に駆け寄ってくれる。


続いてひー、そしてクラスのみんなも、あたしに「大丈夫?」と優しく声をかけてくれた。