先輩の怒声で、再び教室は水を打ったような静寂が戻った。
なんか……嫌な予感がする。
あたしの予感は、見事に的中してしまった。
「アンタ二年生のくせに、何田代くんに手出してんの?」
──始まった、女の醜い嫉妬が。
派手な外見の先輩たちに、可愛くてか弱いひー。
いじめ、リンチなどといった単語が、頭によぎる。
ただならぬ雰囲気にあたしはいたたまれなくなり、教室から飛び出したい衝動に駆られた。
でも……怖いのに、足が動かないのは何で?
「ちょっと可愛いからって調子乗ってんじゃないわよ!」
「どうせさぁ、色めでも使ったんでしょ?今までもそうやってきたんじゃない?」
「だからって田代くんにまで手出すなんて、マジありえないんだけど」
ああ、イライラする。
ひーのこと何も知らないくせに、勝手なこと言ってんじゃないわよ。
あたしもひーのことは嫌いだし、許してもいないけど、この人たちの言ってることは完璧に間違ってる。