「……ひー」
なるべく落ち着いた声で優しく呼ぶと、ひーは振り返ると同時に立ち上がった。
「あ……はる……」
占い師の衣装に身を包んだままのひー。
あたしが言おうとしている事がわかってるのかわかってないのか、ひーの目はあたしをまっすぐに見てはくれない。
「ひー、何で田代先輩を振ったの?」
あたしが言うと、ひーはやっとあたしを見た。
何も口にはしないけど、「何でそのことを知ってるの?」と、その丸い目が問いかけている。
だけど、今はそんなことどうだっていい。
どうしても聞かなきゃいけない、振った理由を。
じゃないと、あたしが納得できない。
「ひーも……田代先輩のこと好きでしょ?なのに……何で!?」
真っ赤になって、ひーは俯いてしまった。
しばらくの重い沈黙のあと、ひーが目を伏せたまま、つぶやくように言った。
「……わかってたんだ、はる」