田代先輩の言っている意味がわからなくて、あたしは首を傾げる。
「裕菜ちゃんに振られちゃった」
──は?
悲しそうに笑ったまま、でも声だけは明るく。
田代先輩は言った。
でも……そんなの嘘だ。
ひーも田代先輩が好きなんだから、先輩の告白を断るなんてありえない。
『今年度ミス・ミスターコン、グランプリは……田代、そして中里〜〜!!』
……グランプリに選ばれた二人は、結ばれるはずなのに。
「先輩……それ本当なんですか?」
「え?うん……『ごめんなさい』って言われちゃったよ」
そんなの……絶対何かの間違いだよ!
「あたし、ひーに話してきます!」
引き止める先輩を無視して走りだしたあたしは、意外にもすぐにひーを見つけることができた。
「いた……」
中庭のベンチに座って、たそがれている。
吹奏楽部の演奏も終わっていて、いつもの静かな中庭にいるひーは、泣いているように見えた。