「さーて、いよいよ結果発表となります。ミス・ミスターコンテスト!
みなさんが投票したお気に入りの子は、果たして優勝するのでしょーか!?」
ドラムロールがスピーカーから流れはじめる。
ステージに横一列で並んだ、コンテストの出場者たち。
結果なんて聞かなくても、みんなわかってるよ。
きっとこのあとには、ひーと田代先輩が嬉しそうに笑ってるんだ。
「今年度のグランプリは──…」
そこにいたくなくて、あたしは結果を耳にする前に校舎へ走った。
耳を塞いで、振り向きもしないで、ただひたすら。
どこかひとりになれる場所はないかと、あたしは走り続けた──。
──ガラッ
ドアが開く音で、あたしはパッと顔を上げた。
「音楽室でふたりっきりってさ、なんかちょっとよくない?」
別に……。
確かに夕陽が差し込む、やけに広い音楽室は嫌いじゃない。
いつもは真っ黒なグランドピアノが、この時間だけはオレンジを混ぜていて。
だけど今は、それを綺麗とか思える余裕なんて、少しもないんだ。