……ミスコンが始まった。
「中里裕菜です。えーと、えーと……」
らしくもなくもじもじして、ステージ上で口ごもっているのはひーだ。
ひーは目立つわりに、大勢の人の前に立つのが昔から苦手。
そんな姿も、男子たちのハートをがっしり掴む要因だったりする。
「去年に引き続き、この場に立たせて頂いたことを嬉しく思います!みなさん、よろしくお願いします!」
特にアピールはせず、丁寧にお辞儀をしてから、ひーは舞台袖へとおりた。
「今の子、可愛かったね」
「うん。“女の子”って感じ。私あの子に投票しよーっと」
「うちもー」
隣の女子二人組が、そんなことを話しているのが聞こえる。
「田代先輩とお似合いだよね!」
そんなふうに言って笑っているその子が、ひどくむかついた。
ミスコンが終わるまで、ミスターコンの結果は発表されない。
だけど、誰もが田代先輩がグランプリだとわかっていた。
そして、
ミスコンのグランプリも……。