泣きたいのに、涙が出ない。
あんなに大好きだった人が、あと数時間後に親友と結ばれてしまう。
だというのに、涙の一粒も出てこなかった。
心が泣きすぎて、目から出る分の涙が足りないのかもしれない。
そんなことを思っていると、
「はる!お待たせ!」
自分の当番が終わったひーが、教室から飛び出してきた。
……占い師の衣装のままで。
「ひー、制服に着替えないの?」
「うん。この衣装可愛いし、結構気に入ってるからこのまま回る!ミスコンもこれで出場するよ」
くるっとターンして可愛くポーズをとる、ひー。
あたしとは大違い。
あたしは、衣装のまま教室から一歩出るだけで嫌だったのに。
周りの人たちも、可愛いとか綺麗とか、あたしに言ったのとは正反対のことを口にしていた。
ひーはキラキラしてて、隣を歩いていても、あたしは随分後ろにいるように感じた。