「ごめん……。ひーの当番終わる時間だから……」


あたしは無理やり高村くんの手を振り払うと、走りだした。


さっきまでこそこそと話していた女の子たちの視線が痛い。


何で……いつもあたしばっかり。


こんな苦しい思いなんて、人気者のひーはしたことないんだろうな。




「ひー、終わった……」


教室に戻り、中を覗くと。


あたしは言葉を失った。



「裕菜ちゃん、俺と一緒に回ってくれないかな……?」



何で……田代先輩が?


何で……その隣にはひーがいるの?


「た、田代先輩……。でも……」


ちょっと、ひー。


あたしを応援してくれるんじゃないの?
それなのに何で、真っ赤な顔で戸惑ってんのよ。


「今日がダメなら……せめて明日でも……」


田代先輩が必死にひーに頼み込むけど、ひーはうんともすんとも言わない。



その時、あたしはひーの気持ちが手に取るようにわかった。


先輩からの申し出を嬉しく思いながらも、応援すると言った手前、素直に応じることができない。


やっと気付いた。


ひーたちの邪魔をしてるのは、あたしだ──。