「何がじゃないよ!やっぱり衣装のまま回るなんて無理。あたし、着替えてくるっ」


踵を返して走りだすけど、やっぱり高村くんに捕まえられてしまう。


「ダーメ。せっかく可愛いのに」


「……可愛いなんて、高村くんしか思ってないよ」


そう……高村くんは物好き。


あたしを可愛いって言ったり、あたしなんかを好きになったりしちゃうぐらい変な人。


だから周りのことなんて見えてない──。



「あれ高村くん?一緒にいる子誰?」


「同じクラスの伊沢はるひ!裕菜の親友らしいよ」


「あの二人付き合ってんの?」


「えー!有り得ないでしょ!」



──そんなひそひそ話なんて、高村くんにはきっとまったく聞こえてない。


だから、あたしなんかと一緒に歩けるんだ。


あたしは……高村くんの隣を歩くことすら申し訳ないのに。


ただでさえ可愛くないあたしが派手な衣装を着てるだけでおかしいのに、

モテモテの高村くんと一緒に歩いてたりしたらあたしは、女の子から何をされるかわからない。