で、気付く。


「あ……着替え……」


高村くんは、自分とあたしの格好を見て足を止める。


さすがに、占い師の衣装のまま校内を回るのは恥ずかしい。


「じゃあ……あたし、着替えてくるね……」


「ダメ!」


教室に戻ろうとしたけど、腕をつかまれて動けない。



「今の伊沢、めちゃくちゃ可愛いから……そのままでいてほしい」



そんな風に懇願されてしまっては、あたしの答えなんて決まってる。



「……わかった」



君だけだから。


あたしを“可愛い”と言ってくれるのは、高村くんだけだから。


君がそこまで望むなら……。




そうして校内を回りはじめたんだけど……。



「高村くん、やっぱ無理!」


あたしはそう言って、足を止めた。


すると、前を歩いていた高村くんも、あたしに気付いて止まってくれる。


「……何が無理?」


不思議そうに首を傾げる姿は、本当に何もわかってないらしい。


苛立ちを抑えながらも、あたしは少し強く言った。