「どうだった!?」



あたしの当番が終わってから、高村くんが身を乗り出すようにして聞いてきた。


「……どうって、何が?」


冷静に返すと、顔をしかめる高村くん。


「何がじゃねえよ。先輩!来てただろ?」


「……うん、普通に……」


「普通って何だよ!」


あたしの返答に納得しないのか、高村くんはじれったそうに座ったまま手足をばたつかせた。


──本当に何もなかった。


占い師の衣装を褒めてもらえたわけでもなく、ましてや、文化祭一緒に回ろうとか誘われたわけでもなく。


ただ……あたしが先輩の恋を応援しただけ。


たった、それだけ。思わずため息が出てしまうぐらい。


黙ったままのあたしから、何かしら察したのか、高村くんは「よし!」と立ち上がる。


そして、あたしに手を差し伸べた。


「伊沢!一緒に回ろうよ!」


「え……?でも、あたしひーと……」


「だから、中里が当番終わるまで!」


あたしが答えるより先に、高村くんはあたしを教室から引っ張りだした。