「──…はる?」



優しい声がして、あたしはゆっくりと重いまぶたを開けた。


オレンジ色の光が目を刺激する。


だんだんと視界がはっきりすると同時に、頭も現実へと戻される。


……夢?


熱が出てて学校休んで、それから夕方までずっと寝てたらしい。


枕が濡れていたけど、そんなことどうでもよくて。


今、部屋にいる自分以外の人間に目を向けた。



「……ひー?」


「おはよう、はる」


柔らかい笑顔があたしの心を優しく包んでくれたけど、同じように笑顔を返すことはできない。


さっきのは夢だとわかったけど、あたしが最低なのは事実だから。


ひーがあたしに笑いかけてくれなくなるのが、今日だとしてもおかしくない。


自分はひーを嫌ってるのに、ひとりになるのは嫌で、ひーに嫌われるのを恐れてる。


本当にあたしは、つくづく最低な人間だ……。



あたしが口を閉ざしていると、ひーがあたしの部屋にいる理由を話してくれた。