あ、ひーだ。
まわりは真っ暗で何も見えないのに、目の前に現れたひーの姿は、はっきりと見える。
「ひー…!」
呼びかけたけど、ひーは無表情で何も応えない。
もう一度名前を呼ぼうとした時、
「はるなんて大嫌い」
聞いたことのない、ひーの低く冷たい声だった。
「えっ……」
そして走りだすひー。
「あ……待って!ひー!」
手を伸ばして慌てて追いかけたけど、ひーとの距離は縮まらない。
それどころかひーはどんどん行ってしまって、暗闇の中に消えていった。
ひー……。
「伊沢、おまえ最低だな」
そんな声がして振り向くと、高村くんが軽蔑の目であたしを見下ろしていた。
「高村くん……」
屋上で言われた“最低”とは違う、冷たく蔑むような言い方だった。
高村くんのまわりに、クラスのみんなや田代先輩も現れる。
“最低”や“酷い”など、あたしを批判する言葉を残して、みんなや高村くんはひーと同じように消えていった。
暗闇の中で、あたしはうずくまり、声をあげて泣いた。
誰か……助けて……。