「“放してっ!”だってぇー!」
「何?桐谷って喋れたの?」
「はっはっはっ!口に上履きでも突っ込んどけよっ!」
顔を押さえつけられると、誰の物とも分からない上履きが迫ってくる。
暴れようとしても歯が立たない。
「ノーリアクションだった桐谷が嫌がってるぜ!」
「ウケる!」
どこからともなく、
「男子、ちょっとやりすぎ…。」
という声が聞こえた。
その時、別のもっと大きな声が響き渡った。
「お前ら何してんだよ!!」
教室中の視線が注がれた。
そこに立っていたのは、悠(ハルカ)だった。
ほとんど兄妹のように育ってきたあたしも見たことがない恐い顔をしている。