「昔は、顔も名前も女みたいだってイジメられてただろ?
あの頃、俺を庇ってケンカまでしてくれたの、ちづだけだった。正義の味方だったんだよ、ちづは。」


「正義の味方って…。」



言いすぎだ。
あたしは、そんな大したもんじゃない。




「でも、自分が情けなくて恥ずかしかった。格好悪いなってさ。
だから、あの頃からだよ。ちづに頼ってもらえるようになろうって思ったのは。」


「そんなこと、考えてたの?」


「勉強が苦手なちづに勉強教えてやれるように頭良くなろう、とか。
ちづより背高くなって強くなろう、とか。
ちづより速く走れるようになろう、金魚すくいで負けねぇようにしよう、とか。」



驚いた。
あたしが悠にイライラしてたところは、あたしのためだったの…?


じっと悠を見つめると、その視線に気づいた悠はまた手を動かし始める。

それが照れ隠しだと、その時のあたしには分かった。



「まぁ、何つーか、昔の借りがあるからさ。
一人で我慢して耐えるんじゃなくて…もっと頼れよ。」


ぶっきらぼうな言い方で、悠が言う。
それが、何だか可笑しかった。




あたしには、こんなに近くに味方がいたんだね。