「太平洋戦争より前に、日本がアメリカに桜を贈ったことがあって、ハナミズキはそのお礼にアメリカから贈られたものらしいんだ。」


「うん…。」


「でも太平洋戦争中、ハナミズキは敵国からの贈り物として冷たくあしらわれていた。
この写真に写ってるのは、その時の原木だと思う。」



あたしには、悠の言おうとしていることがよく分からなかった。




「けど、この町にハナミズキの原木があったなんて話聞いたことがないし、もしかしたらもう残ってないってこともある。」


「そんな…。」



やっと手掛かりが見つかったのに…。


肩を落とすあたしに、悠が真剣な表情で言った。


「でも、もし残っているとしたら人目につかない、誰にも見つからない場所だ。」


「え?」


「こんなに堂々と写真撮ってるくらいだしな。
この町で、今も昔も誰も寄りつかない場所があるとしたら……。」