「明子!」


「お母さん!」


避難所で再会できた母に、私は駆け寄りました。

母は涙を流しながら「良かった、良かった」と何度も言います。



ここへ辿り着くまでに、私は残酷な光景をたくさん見ました。


黒焦げになって重なり合った死体の山。


手足がバラバラになった死体は道の真ん中にありました。


防空壕にみっしりと詰まった死体を前にして、大声で泣いている人も見ました。
黒焦げの死体、ピンク色の死体。
おそらく蒸し焼きになってしまったのだと思います。




惨い、そんな言葉では片付けられないほど酷い光景。

私は自分が助かったことが不思議でした。




「お母さん、幸生くんは?小夜子ちゃんは?」


「…分からないの。」


そんな…。


お母さんの話によると、幸生くんのお母さんは無事だったそうですが、幸生くんと小夜子ちゃんは行方不明のままでした。


「幸生くんのお母さん、幸生くんたちを探しに行ってるの。」



私は、最後に見た幸生くんの姿を思い出していました。
炎の町に消えていく後ろ姿を。




幸生くんは、「必ず行くから」と言いました。

約束をしました。


幸生くんは、嘘をついたりしません。




「お母さん、私も探す。」