私の手を引いて、幸生くんは走りだしました。 落ちてくる火の粉を避けながら、人波を潜り抜けて、ひたすら走ります。 私の足は何度ももつれそうになりました。 焼夷弾による爆撃は尚も続き、地面にも火がついています。 もし、あのまま一人だったら、 私は生きることを諦めていたでしょう。 今は、この手の温もりが大きな力となって私を突き動かしています。 繋いだ手から伝わる命の温かさ。 あの夏、私たちは確かに生きていました。