緩やかな風が吹いて、葉の揺れる音がしていた。
山の中は静かだ。
自然が生み出す音だけがしている。
息を切らしながら石段を上りきって、あたしは懐中電灯の小さな光を頼りに辺りを見渡した。
記憶の片隅に残る神社があった。
昔話とかに出てきそうな、古い神社。
ただでさえ不気味なのに、夜のせいか一段と不気味だ。
思わず背筋がゾクッとする。
いくら、ばあちゃんのためとは言っても、あたしもエラいことを引き受けたもんだよ…。
「ちづー、ちょっとこっちに来てみろよ。」
「え?」
暗闇の中でも彼は平然と動き回る。
懐中電灯を向けると、神社の左側からあたしを呼ぶ。
周囲は木々に囲まれているのに、そこだけは開けていた。