「…学級委員が何か文句あんの?」



高嶋の低い声には威圧感がある。

久保田もだけど、ムダに背が高くて体格も大きい。


対して、悠は背こそ伸びたけど細身だ。


ケンカをしたところで勝負は見えている。




あたしは心の中で、
余計なことをしないで、と叫ぶ。


でも、それは悠を心配してじゃない。



自分の保身のためだ。



頼むから、これ以上面倒なことにならないでほしかった。

あたしのことは放っといて、関わらないで。




そう目で訴えても、悠は気づかない。

怒りに震えて、高嶋を睨みつけている。


「いい加減にしろよ。これじゃイジメだ。」


「成海はマジメだねぇ〜。ボクら千鶴チャンと仲良く遊んでただけでちゅよ〜。」

草野が小バカにしたように言うと、久保田もヘラヘラしながら口を開く。


「大体、先にケンカ売ってくんのはこの女だっての。人のこと睨んでさぁマジうぜぇ。」


「ふざけんなよ。前から勝手にイチャもんつけてんのお前らの方だろ!」



今にも掴みかかっていきそうな勢いで悠が怒鳴れば、余裕そうに笑みを浮かべる高嶋。

でも、その奥の瞳は全然笑ってなかった。



「そんな証拠がどこにあんの?被害者はこっちだぜ。」


「ちづはそんなことしねぇよ!キツそうとか、睨んでるとか誤解されてずっと気にしてきたんだよ!」


「…ちづ?」



ぼそりと高嶋が呟き、あたしはビクンと肩を揺らした。


嫌な予感が渦を巻く。

恐怖で手のひらに掻いた汗を握りしめる。


悠は高嶋の言葉に気づかず、さらにまくしたてた。




「俺は知ってる。ちづは人にケンカ売るような奴じゃねぇ!二度とちづに関わんな!!」