植園は、頭を無造作に指で掻きむしった。

「いいわ、教えてあげる。私たちはあなたの大学で覚せい剤の取り引きが行われているという情報をつかんだ。内偵を重ねたけれど、よほどうまく取り引きをしていたのか証拠がでない。ましてや買ったと思われる人物すら分からなかった。途方にくれているところに、自動車事故を起こした学生の車から覚せい剤が見つかったの。それが松下野々香ってわけ」

 雪乃は黙って植園を見つめていた。反応がないのを確認すると、植園は、
「しかし、松下野々香が所持していた量は0.001グラムしかなかった。尿検査もマイナス反応・・・おそらくどこかで使用して、完全に身体から抜けるのを待って帰宅しようとしたのね。覚せい剤っていうのは0.002グラム以上がおおよその起訴できる目安なの。松下野々香の量は不起訴とせざるをえない量だった。だから、取り引きをしたの」

「取り引き?」

「そう。釈放する代わりに『販売』をした人物を教えてもらったわけ」