部屋に戻ると、
「ユキチャン、オキャクサンバカリネ」
と、うらやましそうにキャシーが言った。

「どう?状況は」
読んでいた本をたたむと和美が尋ねる。

「弁護士さんは『その友達があやしい』って刑事さんに言ってくれるそうです。面会に来た友人にはとりあえず釈明はしました」

「そうか。あとは昨日も言ったけど、ダミーの証拠が何かをつきとめんとな」


 しばらくして、職員から声がかかった。取り調べがあるとのことだった。

 手錠をはめられ重いドアが開けられると、吉沢がそこに立っていた。

「よく眠れているかい?」
7階に向かいながら吉沢がさりげない口調で聞いた。

「はい。同室の方が良い人ばかりなので助かっています」

「そっか、ご飯は?」

 雪乃は、ふっと笑うと、
「いえ、なかなか。でも、少しずつ慣らしています」
と言った。