「了解。おそらく彼女、ええと・・・松下野々香は警察にマークされていることを知って、あわてて君にケースを渡したんだろう。ただし、売人っていうのは薬の売買に関しては何かしらのメモや記録を残しているはず。それが君の部屋にないとすると、松下野々香の情報もあやふやになる。そのへんを刑事や検事につついてみるよ」

「分かりました。どうかお願いします」

 大きくうなずくと高橋は、ふっと笑った。
「雪乃ちゃんも災難だなぁ。何年かぶりの再会がまさかこんな場所でだなんて思わなかったよ」

「ひどい、私だってこんな会い方したくなかったですよ」
そう言いながらも雪乃の顔にも笑顔が浮かぶ。

「他にだれか連絡してほしい人はいないかな?僕からでよければ伝えておくよ」

「あ」雪乃はそう言ったあと、迷うようなそぶりを見せたが、やがて恥ずかしそうに言った。
「あの・・・、工藤一平さんに連絡してもらえますか?」