翌朝、歯みがきをしていると職員が横に寄ってきた。

「33番、面会きてるよ。弁護士さん」

 急いで口をゆすぐと、言われるがまま『面会室』とかかれた部屋に案内された。鍵を開けてもらうと、すぐに中に通される。

 弁護士接見は立会いが必要ではないらしく、すぐに職員は出て行った。

 面会室は、こちら側と向こう側の真ん中に透明なプラスチックのしきりがあり、よくドラマで見るものそのままだった。

「高橋さん!」
ガラスの向こうにいる顔を見たとたん、雪乃は声をあげて近づいた。

「久しぶりですね、雪乃さん」
高橋は目を細めて笑うと、こちら側の椅子に手をやって座るように促した。

「いつもみたいに雪乃ちゃん、でいいですよ」

 高橋は50歳くらいの笑うと目が線になるような顔をしている。髪を後ろでくくっており、見事な髭も生えているから、見た目は絵描きのようだ。

「突然すみません。実は困ったことになりまして」

「うん、大体は刑事さんに聞いたよ。大変な事件にまきこまれたようだね」