「渋谷・33番」

 ようやく雪乃の番号が呼ばれると、13階にある部屋に連れて行かれ、検事の取り調べがはじまった。

 和美のアドバイスどおり、昨日同様余計なことは話さなかった。検事は、刑事に比べると威圧的で、話し方は事務的だった。

 その後、裁判官に会い、弁護士をつけるかどうかを尋ねられた。

「あなたの事件は裁判になるかと思われますから、国選でも私選でも弁護士をつけたほうがいいでしょう」
国選というのは国が選ぶ弁護士ですべて無料との話だったが、雪乃は知り合いの弁護士の名前を告げ、連絡してもらう事にした。

「私選ですと料金が発生しますが、それでもいいですか?」
眼鏡越しに尋ねる裁判官に対し、雪乃は大きくうなずいて言った。
「知らない方よりも、知っている方にお願いしたいので私選でお願いします」

 朝、職員に教えてもらったとおりひとりだけ電話ができる、と裁判官は言ったがしばらく思案した後、雪乃はそれを辞退した。

 話すことはできず、裁判官が『捕まっている』という事を伝えるだけだと知ったからだ。

 それでは余計に心配をかけるだけだろう。