留置所の朝は早い。

 6時になると、
「起床!」
の声とともに飛び起き、順に布団を倉庫へとしまい顔を洗う。

「おはようございます」
の声がたくさん交わされている。

 部屋に戻る前に職員のひとりに声をかけた。夜勤明けなのだろう、目を真っ赤にさせた30歳くらいの女性だった。

「すみません、電話はどこにありますか?」

「は?」
まるで宇宙人でも見たかのようにきょとんとしている。

「急に来ちゃったものですから、友達とか親に連絡したいのですが」

「あぁ・・・」意表をつかれたように職員はつぶやくと、
「33番はこういうところはじめてなのね」
と、つぶやくように言った。

「はい」
もちろんです、とでも言いたげに雪乃は答えた。

「あのね、あなたは逮捕されてここにいるのよ。そんな人が電話をつかえるとでも思うの?」